誰かの期待を満たすために生きてはいけない
タイトル:嫌われる勇気
著者:岸見一郎、古賀史健 (著)
出版社:ダイヤモンド社
発行形態:単行本
『嫌われる勇気』は心理学界では超有名なアルフレッド・アドラーという方の教えを伝えるための本です。
この本のなかでは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言されています。
対人関係で悩まないためにはどうしたら良いのか。
その解決策が哲学者と青年の対話篇形式によって分かりやすく示されています。
今回はこの本の内容についてご紹介していきましょう。
第1章:なぜ『嫌われる勇気』が潜在意識におすすめなのか?
実は私は「言いたいことが言えない」性格です。
その性格のせいでこれまで何度も「自分ってダメだなぁ」と思う経験をしてきました。
周りの空気を常に察知し、自分が意見することで波風が立ってしまうかも…と思えば周囲に同調して自分の意見を押し込めてしまう。
その場はなんとなくおさまっても、自分の気持ちを無視してしまったことで消えない「もやもや」が溜まっていくような気がしていました。
どうしていつもこうなんだろう。こんな自分は好きじゃない。
けれど自分の行動を変えることはなかなかできないものですよね。
どうして私は人の顔色を窺ってしまうのだろう。
周囲に合わせてしまうのだろう。
そうする理由はどこにあるんだろう…と考えたとき「人に嫌われたくないから」という気持ちがあるのではないかと思いました。
『嫌われる勇気』を潜在意識におすすめする理由は、私自身が心の奥に隠していた「誰かに嫌われたくない」という気持ちを受け入れられたこと、対人関係の悩みから解放されるキッカケをつくることができたからです。
私と同じように
・意見を言えば角がたつかもしれないから黙っておく。
・断りたいけど断ったらイヤな顔をされるから仕方なく受け入れてしまう。
・本当は怒りたいけれど、いつも笑顔の「良い人」を演じてしまう。
などなど、同じような経験をしたことのある人もいると思います。
実はこうした考え方は自分本位でなく、他人本位の考え方であることに気付いている人は少ないかもしれません。
では他人本位な考え方ばかりしていると、どんな不都合があるのでしょうか。考えられるのは
・悩みが尽きない
・解決策が分からない
・自分を見失う
・何がしたいのか分からなくなってくる
ということです。
『嫌われる勇気』はその他人本位な考えこそが人間関係の悩みを引き起こしているのではないか?という気付きを与えてくれます。
第2章:『嫌われる勇気』のあらすじとは?
この本で書かれている内容をまとめてお伝えする前に、ストーリーのあらすじについて簡単に説明しましょう。
古い都のはずれに、ある哲学者が住んでいた。
「世界はどこまでもシンプル。人は今日から幸せになれる」
そう哲学者はいう。
悩み多きある青年は「世界は矛盾に満ちていて幸福などありえない」と考えていた。
哲学者のいうことを到底受け入れることができないと考えた青年は哲学者に会い、その言葉の本当の意味を問いただすことにした…。
こんな風にして物語は始まります。
お話もこの青年と哲人のやり取りで進んでいくんですね。
難しいテーマの本はついつい眠くなってしまう私ですが、対話形式で進んでいくこの本は自分が青年になっている気分になり、とても読みやすいです。
私のように小難しい話はつい眠気がおそってくる…という人も2人のやり取りを通して読んでいくと自然と内容が頭にはいり、すいすい読めると思います(笑)。
第3章:『嫌われる勇気』でアドラーが言いたい3つのこととは?
この本でアドラーが言いたいことを自分なりに3つにまとめてみました。
・「世界を複雑にしているのは自分」
今、住んでいる世界をみなが同じように見ているとは限らない。
自分が生きているこの世界は、自分が意味付けを施した主観的な世界である。
その世界は誰とも共有できないもの。
・「変われないのは変わらない決心をしているから」
変わりたいと願いながらも変わらないのは自分で「変わらない」という決心をしているからだ。不満はある。不幸だとも感じる。
けれど「このままの自分」でいることが何よりも楽で変わらないと決めている。変わることは恐ろしいと感じている。
・「誰かの課題には介入せず、自分の課題にも介入させない。」
上司の機嫌が悪い。妻の機嫌が悪い。機嫌が悪いのは上司や妻の課題であって、自分の課題ではない。だから考える必要はない。その気分を分かちあう必要などない。
どれも私にとっては目から鱗な教えでした。人間関係の悩みを解決するために特に重要かも…と思うのは3つめの「課題の分離」です。
これができるようになると、対人関係の悩みから解放されるキッカケをつかむことができると思いました。
■第4章:『嫌われる勇気』を持つには?
この本では「トラウマ」「過去による支配」「自分への自己嫌悪」「劣等感」「承認欲求」などさまざまな言葉が登場しますが、キーワードになっているのは「自分への勇気づけ」です。
人間関係で悩まないようにするためには「勇気づけ」が大事です。では「勇気づけ」をするためにはどうしたら良いのでしょう。『嫌われる勇気』では次の3つのことができるようになると良い、と説いています。順番に見ていきましょう。
1、「自分は自分のままでいい」と思う(自己受容)
勇気づけへの始めの一歩は自己受容ができるようになることです。
自己受容は自分に何がないかでなく、あるものをどう使っていくかを考えることです。
自己受容というのは言葉だけ聞くと難しく感じるかもしれませんが、超ポジティブ人間になって「自分は絶対にできる!」と暗示をかけるのではなく、できない自分をそのまま受け入れるということです。
できないことを「ああ、自分ってダメだなぁ」と悲観する必要はまったくなし!変えられるものもあれば、変えられないものもある。それを見極めて変えられるものは「変えていく勇気を持つ」ことが自己受容につながっていきます。
2、根拠がなくても無条件に「誰かを信じる」(他者信頼)
たとえば信じたいと思う人のことを無条件に心から信じたとします。けれど、いとも簡単に裏切られた…。すごく悲しいですよね。その人をうらみがましく思うかもしれません。そのせいで、誰かを信じることができなくなってしまう人もいるはずです。
けれど、それでは対人関係の悩みはなくなりません。
人間関係の悩みから解放されるには「他者信頼」が必要だからです。
ここで考えたいのは「相手が裏切るか、裏切らないか」はこちらで操作できるものではないということです。裏切る、裏切らないを決めるのは自分じゃなく相手。そうであるならそれは「他者の課題」で、自分とは何の関係もないことだという見方はできないでしょうか?
私たちが考えるのは「信じる」か「信じない」かのどちらかだけで良いのです。
実は1の「自己受容」ができるようになると、裏切りが他者の課題であることも理解できるようになるので人を信じることが怖くなくなります。
3、「誰かの役に立っている」と思えることをする(他者貢献)
自己受容と他者信頼ができるようになると他者を仲間と思えるようになります。
他者を仲間と思えるようになったときに感じて欲しいのが共同体のなかで「ここにいても良い」という所属感です。
所属感を得るためには「他者貢献」が必要になってきますが、ここで注意してほしいのは他者貢献は「自分を捨てて尽くすこと」でなく「自分の価値を感じるためにするもの」だということです。
例えば仕事を例にあげて考えてみましょう。
仕事をするのは何のためでしょうか?
生活していくため、信用を得るためというのもそうですし、共同体に身をおくことで「誰かの役に立っている」と思えることもありますよね。自分の存在価値を感じるためというのは「ここにいても良いんだ」という所属感を確認するためともいえるのではないでしょうか。
だからそうした意味での仕事も「他者貢献」といえると思います。
ただ他者貢献に考えられることのなかには「私はこれだけやっているのに、どうして?」と思う場合もあるようです。例えばこんな事例があります。
結婚してだんなさんと子どもがいるお母さんがいます。夕飯が終わると家族はおのおのテレビを見たり、音楽を聴いたり…。これからたまった洗い物を片付けなければいけないお母さんは
「どうして誰も手伝ってくれないの?私だけが片付けなくちゃいけないの?」
と不満です。
確かに夕飯のあとは1日のうちでいちばんくつろぎたい時間です。まだ家の仕事が残っているかと思うと文句も言いたくなりますよね。
実はそう思ってしまうのは理由があるのではないでしょうか。その理由とは、実はお母さんは「家族を仲間と思えていない」ということです。自分以外の他者を敵だとみなしているんですね。だから「私だけが」という発想を持ってしまう…という可能性があります。
もしも他者を仲間だと思っているなら、洗い物を片付けるという行為は貢献といえるのです。
ただ貢献は「目に見える形」でなくても良いそうです。
貢献が実際に役立っているかを判断するのは誰かです。それは他者の課題であって自分の課題ではありません。だから本当に貢献できたかどうかは分からないですよね。
大事なことは「役立っている」という主観的な感覚「貢献感」を持てること。貢献感を持つことができれば、それで良いのです。
「ありのままの自分を受け入れる」「誰かを心の底から信じる」「誰かの役に立っている」。この3つは1つができれば、次もできる。次ができれば次もできると、ぐるぐる連鎖しています。
この流れを自分のなかに取り込むことで自分を勇気づけることができ、対人関係の悩みから解放されるキッカケとなってくれるのかもしれません。
第5章:『嫌われる勇気』から学んだ!人生が変わったストーリー
『嫌われる勇気』のなかでは
・他者の課題に踏み込まない
という内容がありました。
実生活のなかで、私自身が実際に気付きを感じたエピソードがありますのでご紹介させてください。
私には小学生の息子がおります。ある日、学校から帰ってきても夕飯の時間まで宿題をしないので「早く宿題をやりなさい」と声をかけました。
しかし、いつまでたってもテレビから目を離そうとしない…。
さらに2回ほど声をかけても動く気配がなかったため、テレビの電源をオフ。すると子どもは仕方なく…といった様子で宿題をやり始めました。けれど私自身は毎日のように行われるこの一連のやりとりを「イヤだなあ」と思っていました。
というのも「言われてからやる宿題」ほど嫌なものはないよなぁ…と思うからです。私の両親は勉強について一切口に出さないタイプでした。それが心地良かったので私も同じように子育てしたいと思っていたのですが、言わなければずっと遊んでいるわが子を見ているとつい心配になって口を出してしまうのです。
『嫌われる勇気』ではこうした状況を
「子どもが勉強するのかしないのか、遊ぶのか遊ばないのかは子どもの課題で親の課題ではない」
と説いています。
それはそうだけど、宿題をしなければ先生から怒られるかもしれないし、勉強するのは大人になるために必要なことだし…
私はそう思いました。
けれど本当に理由はそれだけなのでしょうか。
子どもが宿題をしないと、親である自分が恥ずかしいと思っていないか。
みんながやっていることを自分の子どもだけがしないのはちょっと…と思っていないか。
親のいうことは反抗せず、素直に聞くべきだと思っていないか。
世間体を考えて、親としての支配欲があって子どもに「宿題をしなさい」と言ってはいないだろうか…。
子どもが宿題をしなかったとして、そこから引き起こるかもしれない問題を背負うのは親ではなく子ども自身です。だから親である自分が考える必要はない。「これは誰の課題なのか?」という視点で自分と他者を分けて考えることをアドラーの心理学では「課題の分離」といっています。
この教えは私にとって非常に興味深いものでした。
そこで「よし!今日から課題の分離をしていこう!」と実践することにしたのですが、正直最初は難しかったです。「子どもの問題」と頭では分かっていても、つい心配したり手を出したくなってしまうんですよね。
そこを我慢して我慢して数日過ごしていました。すると少しずつ冷静に物事が見られるようになってきたんですね。不思議とそれまで見えなかったことが見えるようになってきたのです。
宿題をやらないまま夕飯を食べ終える息子は寝る時間が迫ってくることに気付くとあわてて宿題道具をテーブルに広げ、宿題に取り組み始めます。朝になって慌ててやるんだろうな~と毎度思うのですが、必ず前日の夜に宿題をすませます。息子のなかに「宿題は夜寝る前までにやる」というルールがあるのかもしれないことにそのとき気付きました。
また、それまでは私自身が学校からもらってきたプリントを丁寧に確認し「〇日に○○を持って行かなきゃダメだよ」「明日は何が必要なの?」といちいち声をかけていました。でも、それもやめてみました。すると「明日〇〇がいるから用意してね」「〇〇はどこにある?」と私が言わなくても自分から持ち物を準備することに気付きました。
振り返ってみると息子は、ほとんどのことを自発的に自分でやっていました。それを私が心配して過剰にサポートし、先回りをしていたんですね。息子は息子なりに自分のペースで考え、計画しながらすでに行動していたのです。
アドラー心理学は子育てにおいて課題の分離を考える場合、けして「放任主義」をすすめているわけではありません。子どもの課題は「子どもの課題である」と本人に伝え、頼まれればいつでもサポートできるよう見守っていくことが大切だと教えてくれています。
先回りをしない。心配しない。でもいつも子どものことを知ろうとし、声をかけられればできることを全力で手伝う。『嫌われる勇気』を読み、この姿勢をいつまでも忘れないようにしようと思いました。
第6章 『嫌われる勇気』をおすすめする人・しない人
長々とこの本の魅力についてご紹介してきましたが、では『嫌われる勇気』を読んでほしいのはどんな人なのか。この本をおすすめしたい人を下記にまとめてみました。
・心配ごと・悩み事が多い人
・嫌われることに恐怖心を抱いている人
・人の顔色を窺ってしまう人
・自分の気持ちを口に出せず、我慢してしまう人
・今の自分を変えたい人
『嫌われる勇気』は上にあてはまる人におすすめです。いつも悩んでいる人。心配で眠れない人。人からどう見られるかが気になってしまう人。そんな自分を変えたい人にぜひ読んでほしいと思います。
反対におすすめできないのは
・自分は一生変わらないと決めつけている人
・誰からも好かれたい人
です。
最初から自分は変わらないと思っている人、あるいは自分と関わるすべての人から愛されたいと思っている人にはおすすめできないかもしれません。
なぜなら変わることは自分で決めなければいけないことで、すべての人に愛されることは難しいからです。
第7章:心理学界の巨匠「アドラー」の名言を知りたい!
心理学の超有名人、アドラー。
アドラーの心理学は誰かを変えるためではなく、自分が変わるための心理学だといわれています。
そんなアドラーはこれまで下記のような内容の数々の名言を残してきました。
・何を持っているかでなく、与えられたものをどう使いこなすか
・健全な人は、相手を変えようとせず自分が変わる
・あなたが始めるべき。他の人が協力的であるかなど関係がない
多くの名言を目にするとハッとさせられるもの、ピンとこないもの、なんとなく共感できるものなどさまざまであることに気付きます。
そんなアドラーの名言をもっと知りたい!という人は名言だけをまとめた本もあるのでぜひこちらも参考にしてみてくださいね。
まとめ
『嫌われる勇気』を読み終えたあと、自分がどれだけ他人本位だったかについて考えさせられました。
他人本位な考えから抜け出さない限りは、悩みは尽きないということもよく分かりました。
青年が投げかける疑問、主張は私自身の問いかけだったような気がします。
青年の投げた言葉を哲人はいつもやわらかく受け止め、ときに鮮明に、ときに問いかけるように導いてくれました。
頭のなかがゆっくりとクリアになっていく感覚をぜひ体感してほしいと思います。
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